フェルミ推定を用いた、サマータイム対応にかかるコスト試算

■はじめに
ここでは、フェルミ推定を用いサマータイムの対応にかかるコストを粗々に試算をすることで、最低どれだけの富が無為に失われるかについて明らかにする。


■前提
フェルミ推定については下記を参照のこと
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%9F%E6%8E%A8%E5%AE%9A


推定に用いる数値についてはできるだけ、政府統計など公的な、あるいはそれに近いものを用い、出典についても可能な限り記述する。
また、あて推量が必要なものについても可能な限り実例を用い、非現実的な数値にならないよう心掛ける


■推定
まず、サマータイム対応にかかる大きなコストとしては、次の3つが考えられる。
1. 各家庭での時計合わせを行う作業にかかわるコスト
2. いわゆるコンピュータシステムの改修作業にかかわるコスト


〇1. 各家庭での時計合わせを行う作業にかかわるコスト
これは粗々に考えると、ご家庭の数 × 設定を要する機器の数 × 設定にかかる時間 × 時間当たりの人件費 で推定できると思われる。
それぞれについて下記のように推定する


1-1. ご家庭の数
これは そのまま日本における世帯数であり、下記を参照できる


https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003169257
表より 世帯数の総数 5036.1万世帯


1-2. 設定を要する機器の数
これは、当て推量が必要となる。
一人暮らしの家庭に存在する、時計を持つ機器を一つずつ挙げてくことで推定する。
PC、プリンタ、携帯電話、TV、据え置き型ゲーム機器、携帯型ゲーム機器、壁掛け時計、置時計、カメラ、インターフォン、冷蔵庫、湯沸し器、電子レンジ、炊飯器、電気ポット、ロボット掃除機、エアコン、洗濯機
さしあたり、18個程挙がった
実際には、複数人の世帯では、TVやPC、携帯電話などは複数所持すると考えられるがここではそこら辺の誤差は無視する


1-3. 設定にかかる時間
これは、当て推量が必要となる。
ここでは、設定が面倒な機器や、簡単な機器があることを考慮して、1つあたり2分= 60分の2時間 と仮定する


1-4. 時間当たりの人件費
これは、平均年収 ÷ 12 か月 ÷ 21 営業日 ÷ 勤務時間(8時間) で推定できる。


平均年収は下記を参照できる
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&tstat=000001012969&cycle=7&year=20160&month=0&result_back=1&second2=1&tclass1val=0
PDFのP12 第8表によれば 平成28年度の 平均給与 420.4万円


計算すると 420.4万円 ÷ 12か月 ÷ 21日 ÷ 8時間 = 0.20853174603 ≒ 時間あたり2085円


1-A. 計算
上記で求めた値よりコストを計算する


世帯数の総数 5036.1万世帯 × 設定を要する機器の数 18個 × × 設定にかかる時間 60分の2時間 × 時間当たりの人件費2085円 = 6300161.1万円 ≒ 630億円


〇2. いわゆるコンピュータシステムの改修作業にかかわるコスト
これは粗々に考えると、同じ日時関連の改修を行ったいわゆる2000年問題での対応費用と同程度として推定する で推定できると思われる。


https://www.kantei.go.jp/jp/pc2000/houkokusyo/honbun.html
上記記によれば
97年10月の(社)情報サービス産業協会の調査に基づく試算では、約1.3〜2.4兆円となっている。また、金融監督庁によれば、金融機関等の費用の見積もりは、99年6月末時点で、約7000億円とされている。


金融機関のみで7000億円かかるというのだから、コンピュータシステム全体では前者の資産の上限2.4兆円を採用するのが妥当であろうと思われる。


■その他検討事項
その他の問題として、サマータイムへの対応を行うことで、エンジニアの払底が起こり、本来であれば行えたはずのそのほかの「価値を生むための」システムの開発などが行えなくなる影響も推測される。
これによって得られたはずの価値喪失分もカウントする必要があるだろう。


■結論
各家庭での時計合わせを行う作業にかかわるコスト として 630億円程度
いわゆるコンピュータシステムの改修作業にかかわるコスト として 2.4兆円程度
その他の本来得られたはずの価値喪失分 不明


最終的には 総計 2.5兆円 以上のコストが「何も価値を生まない」コストとして支払われることになると推測される。